上鳥羽橋上鉦講中は、往古より盂蘭盆を中心に先祖や御精霊の供養をはじめ、地蔵盆、大日盆などにも六斎念仏の奉納をおこなってまいりました。現在でも晩夏を彩る風物詩として地域住民に親しまれております。
当講中では空也上人にその淵源を求める空也堂所縁の六斎念仏とされており、講中では六斎念仏を「空也堂念仏」とも申してまいりました。空也堂では近世末から近代にかけて、天皇家の御大葬である「焼香式」に参列する免状を配下の講中に与えており、当講中は空也堂配下の講中の中でも「大導師」として大葬を勤めていたことが文書に記録されています。
現在でもこの「焼香式」に出仕した当時の伝承を菊御紋の金銀太鼓などを用いて「焼香太鼓」の曲に伝えております。
この「焼香太鼓」をはじめ、「節白舞」「飛観音」といった和讃の曲目が伝わっておりますが、今となっては当講中のみが伝える貴重な演目となっています。
また、これまで男性のみによって伝承してまいりました念仏も、平成27年度には、芸能六斎を行う女の子にも参加してもらえるようになり、若手の参加によって、後継者不足の解消の兆しに期待できるようになってまいりました。
曲目紹介
焼香太鼓
天皇家御大葬焼香式出仕の際に奉納された曲目
鉦講中で唯一太鼓を使用する曲です。
太鼓の打ち方には所作があり、「踊る念仏」の原型とされています。
京都以外では、若狭や大阪、奈良などに「太鼓念仏」などとも呼ばれるこれと同形式の六斎念仏が伝承されております。
前回向
「香華」「懺悔偈」「三宝礼」
浄土宗の法要でよく用いられる「香華」「懺悔偈」「三宝礼」ですが、上鳥羽六斎念仏では、独自の旋律を付けておとなえします。
鉦曲
節白舞(ふしはくまい)
六斎念仏の鉦曲として、「ハクマイ」と呼ばれる曲は各所に伝わっています。「ハクマイ」は荘厳な念仏曲として知られますが、京都ではこの念仏曲に和讃を加え、曲調も優雅な都節の「節白舞」が唱えられていました。京都では鉦曲を伝える団体が少なくなり、今では「節白舞」を有する団体は上鳥羽橋上のみとなっております。
鉦曲
飛観音
西国三十三観音の札打ち和讃は、様々な流派の御詠歌によって唱えられていますが、六斎念仏では、そのうちの第一番の那智山にはじまり、粉河寺、清水寺、書写山、廻り納めの谷汲山、そして巡礼の満願に訪れる善光寺を廻ります。巡礼の名所を三十三番の中から飛ばし飛ばしに称えるため、この名称になっているようです。